刑訴における写真撮影の可否②
時間が空きましたが、続きを書いていきます。
写真撮影ですね。
これは「検証」(218)に当たりそうなのは肌感覚でわかります
ここでツイッター等でもありましたが、検証といっても「強制の処分」の「検証」と、「必要」検証とに分類されます。
検証と言われたら「強制の処分」としての「検証」が真っ先に思い浮かぶと思いますが、思考プロセスとしては大丈夫です。もっとも、強制の処分に該当しない場合、任意処分の限界を論じるわけですから、任意の処分としての検証も当然あります。
考えれば当たり前のことですね。
ここで、「強制の処分」について振り返りましょう。
「強制の処分」に該当すれば、刑事訴訟法に「特別の定」が必要となります。
そして、218条により「検証」は令状が必要となります。
ここでの「検証」は「特別の定」があるものなので、「強制の処分」としての検証に該当します。
上記のことを踏まえれば、写真撮影が検証+「強制の処分」に当たれば令状が必要になります。
検証とは、物、場所、人の身体を対象として、対象の状態を五官の作用をもって感得するものをいいます。
五官ってのは目、耳、鼻、口、舌を意味します。そしてこれらの作用なのですなわち五感です。したがって、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことです。舌が触覚ってなんか違和感ありますが。
「強制の処分」とは、対象者の意思に反して、その重要な権利利益に実質的な制約を加えることをいいます。
以上より、「検証」(218Ⅰ)とは、①物、場所、人の身体等の状態を五官の作用により感得する、②「強制の処分」をいいます。
写真撮影は捜査官が写真を撮ることによって現場の状態を記録します。
これは捜査官の五官の作用のうち、”視覚”を用いて行っていますね(①充足)
写真撮影によって制約される権利利益とはなんでしょうか
憲法判例として有名な京都府学連事件では、「みだりに容貌等を撮影されない自由」をいいます。判例上では3要件を示していますが、この後の判例では現行犯性を挙げていないので考慮しなくてもいいです。
もっとも、判例上でも言及していますが、公道上における写真撮影は誰からも見られることを前提に、受忍すべきであるとしています。
したがって、「みだりに容貌等を撮影されない自由」のみでは、「重要な権利を実質的に制約」しているとは認められません。
その後に出されたGPS判例等で「私的領域に対するプライバシーへの合理的期待」(35条)を付加することで初めて「強制の処分」に該当することを示しています。
以上のことを踏まえれば、写真撮影の主戦場は撮影された場所になります。
当該場所が「みだりに容貌等を撮影されない自由」を超えて、「私的領域におけるプライバシーへの合理的期待」をも制約するのか否かを事案の事実をフルに用いて論証する必要があります。
どうしてその撮影が私的領域を侵犯しているのか、自分の言葉で論じていけば良いわけです。
この議論はGPS判例、秘密録音等に応用できます(力不足なので説明できませんが)
検証(最広義)には「強制の処分」(197Ⅰ但)と「必要」(同項本文)なものがあります.後者は公道上の写真撮影や同意ある秘密録音が例です.
— お犬。 (@halu_law) 2018年7月21日
検証の定義は①五官の作用により目的物の状態を感得する,②「強制の処分」です.
解説は最広義の検証についてのみ認定してますので強制処分該当性を検討してます.
酒巻p132によれば,先ほどの①が検証の定義であるとし,218Ⅰの「検証」にあたれば令状が必要としています.最広義等の表現自体はありませんが,「強制の処分」としての検証と一般的な検証とを分けて論じております.
— お犬。 (@halu_law) 2018年7月21日
特定の犯罪に関して犯人証拠の獲得を目的とする司法警察活動は刑事訴訟法の範疇なので全ての警察活動は「必要」な限度でのみ認められる.その程度を超えた類型的に侵害程度の高い「強制の処分」は「特別の定」が必要である.と考えるのがセオリーなのかと思います.
— お犬。 (@halu_law) 2018年7月21日
全て任意処分→「強制の処分」とやるのは面倒なので,答案に書く際にはトップダウン式に「強制の処分」該当生,任意処分の限界と検討していくのでしょうね.
— お犬。 (@halu_law) 2018年7月21日