司法試験目指してわっほいするブログ

主に書評と問題に対する感想をば

刑訴における写真撮影

これからは入学当初から行っている事例演習刑事訴訟法に沿って現状の理解を示していくことにします。

 

なお、ここで記載されるであろう内容は現状の理解であり、執筆に際して何らかの文献等にあたっているわけではなく、内容の信頼性は極めて低いです。

 

第1問の表題は「任意捜査と強制捜査」ですね。

論点としては写真撮影の①強制処分該当性②比例原則でしょう。

 

まず、「強制の処分」(197Ⅰ但書)について

条文から読み解くに、「強制の処分」に該当した場合、刑事訴訟法に「特別の定」が必要になります。これは強制処分法定主義を意味し、その根拠は国民の権利を制約する強制の処分は国民からのコンセンサスなくしては認められないという観点から、国民が選んだ国会議員によって立法させ、法律に定めることで(ⅰ)国民的授権を行うことにあります。

もっとも、この点について写真撮影は検証(218Ⅰ)により法定されてるのでさほど問題にはなりません。

ここで注意なんですが、強制処分該当性を認め、法的根拠を示す際には、なぜその強制処分を選んだのかは記載しましょう。

論証集等では「検証の性質を有するから検証許可状が必要となる」的な記載がありますが、これでは不十分です。なぜ、検証の性質を有するのか、きちんと論証しましょう。

 

上記のことを踏まえると、写真撮影が「強制の処分」に該当した場合、検証許可状に拠るという結論を端的に表現するためには、検証の定義から論証するのが良いと思っています。

 

論証例                                 

 写真撮影が検証(218Ⅰ)に該当すれば、令状なくして行われた本件捜査は令状主義(憲法31条参照)に反し、違法である。

 検証とは、①物、場所、人の身体を対象として、捜査官が五官の作用によりその対象の状態を感得する②「強制の処分」(197Ⅰ但書)である。

  写真撮影はカメラを用いて対象の状態を捜査官の視覚により感得するものである。

 では、「強制の処分」といえるか

                                     

 

「強制の処分」の話に戻りましょう。

上記では条文から法定主義を導きました。

次に、「強制の処分」に該当した場合、「特別の定」が要求されます。

そこで、本問のような写真撮影(検証)は検証許可状という令状が必要です。

では、どうして令状が必要になるのでしょうか。令状主義の根拠から考える必要があります。

捜査令状を請求するのは捜査官ですが、発布するのは裁判官です。したがって両側面から令状主義は導かれます。

捜査官側には、「強制の処分」が国民の権利利益を制約するものである以上、その捜査権の範囲はできる限り制限しなければなりません。そうしなければ、真実の解明に重きを置く捜査官は真実解明のためには国民に対し過剰な制約をしてでも成し遂げようとしてしまいます。これでは国民は常に捜査官からの権利制約を受けてしまうことになり、切ないですよね。

したがって、捜査権限の濫用を防止するために、「強制の処分」を行う際にはその都度令状請求しなければならないようにしたわけです。

次に裁判官の視点からすれば、「強制の処分」をする以上、その捜査が本当に必要なのか、「正当な理由」(憲法35)があるのか審査する必要があります。そうすることで不要な権利制約を未然に防止することが可能になるのです。

 

以上をまとめると、令状主義の根拠は、

①捜査機関の捜査権限の濫用防止

②裁判官による「正当な理由」の審査

となります。

しばしば令状主義の中に対象者に不服申立の便宜を与えることや、防御権の範囲を明確にすることを挙げる方がいらっしゃいますが、刑訴法114条2項が対象者以外の者を立ち会わせることで構わない旨定めていることから不服申立ての便宜を図ることは憲法上の要請ではないこととなります。

 

そして、「強制の処分」における強制処分法定主義と令状主義を考慮すれば、

①国民的授権

②濫用防止

が根拠となります。

事前審査は「強制の処分」であることを前提にその個別具体的な審査であるため、ここでは使いません。

 

上記の趣旨から目的論的解釈すると、「強制の処分」とは、

①対象者の意に反して、

②その重要な権利利益を実質的に制約すること

をいいます。

 

論証例                          

 本問における捜査が「強制の処分」に該当すれば、「特別の定」がない限り認められない。

 法が「特別の定」を要求する趣旨は、捜査機関の捜査権限の濫用を防止することと、刑事訴訟法に法定することで国民的授権をすることにある。

 したがって、「強制の処分」とは、①対象者の意に反して、②その重要な権利利益を実質的に制約する処分をいう

                             

 

長くなったので今回はここまで。次回は具体的に写真撮影の可否と問題の検討を行います。

 

 

以上