逮捕に伴う無令状による強制採尿の可否
応用論点ですね
まず、強制採尿については「強制の処分」(197Ⅰ但)に該当することは当然として、仮に法定したからと言って認められるのか、が問題となります。
強制採尿の方法についてはyoutube等で見ることができるのですが、これがまたショッキングでして。身体に対する侵襲という観点から非常に問題となります。
もっともこの点については判例が218条5項(本来は検証に用いる条文なので準用です)の条件を付記した「条件付」捜索差押許可状をもってなされればいいと言っています。
尿自体がいずれ排出される無価値「物」であることに着目したものですね。
余談ですが強制採血や嚥下物についてもこの視点が役立ちます。
そして、「強制の処分」ですから、それに付随する必要最小限の有形力の行使は「必要な処分」として認められます(222条1項が準用する111条1項はあくまで確認規定ですので理由付けを含めて論証する必要があります)。
したがって条件に付された「医師をもって」を実現するために、最寄り(=必要最小限)の病院まで対象者を連行することまで許容されます。
ここまでが前提。
では、「逮捕の現場」(220Ⅰ②)における捜索は無令状で認められる(同条3項)ことから、これを理由に強制採尿できるのでしょうか
相当説からの説明としては、
まず、220条の趣旨が、逮捕現場には証拠存在の蓋然性が高く、裁判官に令状請求すれば当然に認められる以上、もはや令状を必要としないことにあることから、強制採尿について裁判官の「正当な理由」審査が当然に認められる場合には無令状でも認められそうです。
もっとも、強制採尿には手続き要件として、医師をもってという条件が必要となってきます。これを欠くことができるのかといえば無理でしょう。
また、最終手段性がないことを理由に否定することも挙げられます(ロースクール演習刑訴第1版)。しかし、対象者が明確に拒絶していたり、錯乱状態になっている場合は最終手段性が肯定されることから、この理由だと弱い気もします。
個人的には、強制採尿は逮捕や捜索とは異なり、対象者の身体を侵襲し、かつ羞恥的感情を著しく害するものであるから、「強制の処分」としてすら許容性に争いがあることを理由に、220条の射程外にあるとするのがいいかなあ、と。その際には220条が逮捕に伴う無令状捜索であるから、逮捕や捜索差押と同程度の権利侵害のみ射程内とすべきである、といった感じでしょうか。
修正緊急処分説又は緊急処分説からすると、緊急性で否定されるのではないでしょうか。
諸説ありますが、覚醒剤等の薬物は体内に1週間ほど残るらしいのでその機会を逃したとしても身柄拘束している(少なくとも72時間)以上、緊急に証拠保全しなければならないということは難しいのではないでしょうか(強制採尿の可否でいずれ排出される無価値物といったことが役立つようにも感じられます)。
上記のことを踏まえれば、
1.強制採尿の可否
(1)そもそも認められるか
(2)本件では令状なく行われている→令状主義違反
(3)認められない
2.逮捕に伴う無令状捜索差押
(1)「逮捕の現場」の意義
(2)強制採尿の特殊性
(3)認められない
3.結論
といった感じでしょうか。
以上